
『スーパーカブ』。 両親も、友達も、趣味もない。そんな「虚無」を煮詰めたような女子高生・小熊が、中古のスーパーカブを手に入れた瞬間、世界が色付き始める――。
もしこれがAIの書くPR記事なら、「バイクが繋ぐ心温まる絆と成長の物語」なんて、ヘドが出るほど綺麗な言葉を並べるだろう。
『スーパーカブ』何もなかった少女が、最も「贅沢な呪い」にいたるまで。

ホンダ・スーパーカブ生産1億台突破記念作品。 この数字だけで、すでに宗教的な畏怖すら感じるが、中身は驚くほど淡々としている。だが、その淡々とした描写の裏側に、全ライダーがかつて経験した「ある種の狂気」が潜んでいる。
「中古のカブ」という、最も安上がりで高価なチケット
主人公・小熊が手に入れたのは、わずか1万円のスーパーカブだ。 「1万円で人生が変わるなら安いもの」だって? 笑わせないでほしい。バイク乗りにとって、車体価格は「地獄の入口」の入場料に過ぎない。この1巻で描かれるのは、小熊が「たった1万円の鉄の塊」のせいで、ヘルメットや手袋を買い、メンテナンスを学び、行動範囲という名の「依存先」を広げていく過程だ。
何も持たなかった少女が、「バイクを維持しなければ死んでしまう(精神的に)」という、最も贅沢で不自由な呪いに罹る瞬間。それがこの物語のスタートだ。
ひとりぼっちに、バイクという「逃げ場」を与えた罪
「友達も趣味もない」 それは言い換えれば、誰にも邪魔されない自由があったということだ。 だがカブを手に入れた瞬間、彼女の孤独は「ただの寂しさ」から「バイクを駆る孤高のライダー」へと変質する。
ガス欠の恐怖に怯え、ヘルメットの中で自分の呼吸音を聞き、エンジンオイルの匂いに安らぎを覚える。 この漫画が残酷なのは、「バイクさえあれば、友達がいなくても生きていける」という、危険な救いを提示してしまったことにある。案の定、彼女はその後、バイクという共通言語を持つ「同類」を引き寄せてしまうのだが。
「全世界1億台」という名の同調圧力

スーパーカブが1億台売れたということは、世界中に1億人の「カブ信者」がいるということだ。 小熊がカブを選んだのは必然ではない。この鉄の塊が持つ「壊れない、燃費が良い、どこでも走れる」という圧倒的な合理性が、彼女の空虚な心に付け入ったのだ。
この漫画を読み終えた後、あなたはきっと中古バイクサイトで「スーパーカブ」を検索してしまうだろう。 それが、ホンダとこの作品が仕掛けた巨大な「洗脳計画」の一部であるとも知らずに。
結論:この漫画は、あなたの「何もない日々」を壊す毒薬だ
『スーパーカブ』第1巻は、ハートフルな日常系漫画の皮を被った、「バイク依存症への入門書」である。
小熊が初めてカブのエンジンをかけ、少しだけ遠くのスーパーへ買い物に行く。 そのたった数キロの移動が、彼女にとっての大冒険になる。 「そんなことで感動するなんて」と鼻で笑えるあなたは、まだ正気だ。 だが、ページをめくる手が止まらなくなり、「オイル交換、自分でやってみようかな」と思い始めたなら――おめでとう。あなたはもう、小熊と同じ「バイクという名の迷宮」に足を踏み入れている。

