
バイク界に激震を走らせている「自動変速」の波。ホンダのEクラッチが注目を集める中、ヤマハが放った回答がMT-09 Y-AMTです。
単なる「楽をするための装備」ではなく、「速さと没入感を極めるための進化」。FJR1300以来の技術を結集させた、この全く新しいスポーツバイクの正体に迫ります。
1. Y-AMTが解決する「ライダーのジレンマ」
「スポーツバイクの刺激は欲しいけれど、長距離や渋滞のクラッチ操作はしんどい」。そんなライダーの悩みを、Y-AMTはどう解決したのでしょうか。
| ライダーの悩み | Y-AMTによる解決策 |
| 「オートマは重くて走りが鈍くなりそう」 | 追加重量わずか2.8kg。 ホンダのDCT(約10kg増)と比べ圧倒的に軽量。スポーツ性を一切損なわず、ABSユニット並みの軽さで自動変速を実現しました。 |
| 「シフトダウンの操作を忘れてエンストしそう」 | 停車時自動シフトダウン機能。 マニュアルモード走行中でも、止まれば勝手に1速に戻ります。「ギア抜け」や「発進時のギアミス」という概念が消滅しました。 |
| 「バイクを操っている実感が薄れるのでは?」 | 指先での電光石火シフト。 クラッチレバーを廃したことで、ハンドルを握る手に集中。親指と人差し指のスイッチ操作で、プロライダー並みの正確な変速が可能です。 |
| 「スマホや電子制御の設定が難しそう」 | スマホ連携セッティング。 エンジン特性やY-AMTの挙動はスマホから簡単に変更可能。最新技術を「気楽に」使いこなせます。 |
2. 特徴:スポーツへの没入感を高める「引き算の美学」

ヤマハの思想は「操作のストレスを削り、余裕を走りに充てる」ことにあります。
- 「全集中」のコックピット: 足のシフトペダルと左手のクラッチレバーがありません。その分、ブレーキングやライン取り、体重移動といった「走りの本質」に全ての意識を向けられます。
- ATとMTの二面性: スクーターのように快適な「ATモード」と、指先でアグレッシブに操る「MTモード」。ボタン一つで切り替え可能で、街乗りから峠道までこれ一台で完結します。
3. エンジン:最強の3気筒ポテンシャルを解放
ベースとなるMT-09のエンジン(890cc・3気筒)は、120馬力のハイパワーを誇ります。
- 余裕を生むパワー: 「操作を7に減らし、残りの3を疲労軽減や安全確認に使う」。この余裕が、ハイパワーマシンを「飼い慣らす」楽しさに繋がります。
- 軽量な車体: Y-AMT仕様でも車両重量は196kg。ミドルクラス3気筒としては驚異的な軽さで、クイックなハンドリングを維持しています。
4. 注意点:人間は一度「楽」を知ると戻れない?

あまりに優秀すぎるゆえの、ちょっとしたデメリット(?)も。
- 普通のバイクに戻れない: 停車時に自動で1速に戻る快適さに慣れると、マニュアル車に乗った際にシフトダウンを忘れる「リハビリ」が必要になるかもしれません。
- 効率より「気持ちよさ」優先: 燃費のための早すぎるシフトアップは制限されており、常にMT-09らしい「美味しい領域」を使うようプログラミングされています。
5. 結論:ベテランこそ驚く「次世代のスポーツ」
MT-09 Y-AMTは、決して初心者専用のバイクではありません。むしろ、「左手足の操作から解放されたとき、バイクはどこまで楽しくなるのか」を知るベテランライダーにこそ乗ってほしい一台です。
「人間、楽には勝てない」。その言葉を、最高にポジティブな意味で実感させてくれるのが、このMT-09 Y-AMTなのです。

