『マンガでノウハウ解説! かんたんツーリングマニュアル』を鼻で笑う初心者は、大抵「料金所」で死ぬ

「バイクに乗りたい。でも、死にたくはないし、恥もかきたくない」という、現代的な臆病さと野心を併せ持つビギナーたちへ。

ツーリング。それは「家を出てから無事に帰ってくるまでが遠足」という、あの呪いのような言葉が、人生で最も重くのしかかる遊びだ。 今回紹介するのは、その重圧をマンガという甘い包み紙でデコレーションした一冊、『マンガでノウハウ解説! かんたんツーリングマニュアル』だ。

「航続距離、把握してる?」という、初歩的な生存確認

第1話から「自分のバイクがどれくらい走るか知ってる?」という問いかけ。 「ガス欠なんて、漫画の中だけの話でしょ?」と思っているあなた。山奥のガソリンスタンドが日曜定休だったときの、あの絶望感を味わったことがない幸せ者だ。 この本は、そんな「都会の論理」が通じない場所へ行くための、最低限のリテラシーを教えてくれる。

ソロ vs グループ:人間関係という名の「トラブル」

ヤマハ公式より

ソロなら孤独死の恐怖があり、グループなら「自分だけトイレが近い」という社会的抹殺の恐怖がある。 第10話の「グループツーリングでの作法」は、もはやバイクのテクニックではなく、「空気を読む」という日本独自の精神修行の解説だ。これを読まずに集団に混ざるのは、裸で戦場に行くようなものである。

高速道路の料金所:ETCなき者、去れ

第11話。今やETC全盛期だが、もしあなたが「あえて現金派」を気取っているなら、この章は心臓に悪い。 グローブを脱ぎ、財布を取り出し、小銭を落とし、後続車の殺気を感じる――。そんな地獄を避けるためのポイントが、マンガで分かりやすく(かつ、恐ろしく)描かれている。

閑話休題という名の「裏・真実」

私が個人的に気に入ったのは、「初心者が初めてのツーリングで避けたい相手」という閑話。 世の中には、善意の皮を被った「教えたがりおじさん」や、「自分基準のペースで走るベテラン」が跋扈している。この「避けるべき相手」を見極める能力こそ、バイクを長く続けるための最大の秘訣かもしれない。

事故と後始末:夢から覚めた後の現実

第19話「事故した時」。 ツーリングはキラキラした思い出だけではない。路面が濡れていれば滑るし、相手が逃げることだってある。 「ファミリーバイク特約」や「事故相手に逃げられた話」など、保険会社のパンフレットより生々しいトピックをマンガで読ませてくれる。このリアリズムこそが、この本の真の価値だ。

結論:この本を読んでも、あなたはきっと失敗する

だが、それでいい。 この本は、あなたの失敗をゼロにするための魔法ではない。「致命傷をかすり傷に変えるための知恵」を授けてくれるだけだ。

「マンガで勉強なんて、子供っぽい」 そう言って、装備も知識もなしに走り出したベテラン(自称)が、立ちごけして泣いているのを私は何度も見てきた。

恥をかく前に、この一冊をKindleのライブラリに忍ばせておく。 それが、2026年を賢く、かつ図太く生き抜くライダーの「マナー」というものだ。