2025年、バイク業界では「セミオートマ」というキーワードが静かに、しかし確実に広がっています。
その最前線に立つ予定だったのが、KTMの幻のマシン「1390スーパーアドベンチャー」。
登場間近と噂されながら、公式発表を迎えることなく姿を消したこのバイク。
本記事では、その全貌と背景、そしてセミオートマという最新技術の現状と未来について解説します。
セミオートマとは?いま急増している新たな選択肢

2024年以降、セミオートマのバイクが一気に増加中。
従来のクラッチレスとは違い、クラッチもギアも電子制御で自動化しつつ、マニュアル操作も残す新世代スタイルが主流です。
代表例は以下の通り:
- ホンダ Eクラッチ:CB650R、レブル250など
- ヤマハ Y-AMT:MT-09、トレーサー9
- BMW:R1300GSが完全オートマモードとマニュアルモードを併用可能に
クラッチ操作の負担を減らしつつ、スポーツライディングにも対応する技術として注目されています。
KTM 1390スーパーアドベンチャーとは何だったのか?
KTMの「1390スーパーアドベンチャー」は、2024年秋に登場予定と噂された超豪華アドベンチャーバイク。
ベースはスーパーデュークR 1390の高回転型Vツイン。そこに可変バルブ機構を加え、ツーリング用途に向けてトルクも補強。
走りも装備も完全に“全部入り”のバイクでした。
豪華すぎる装備たち
この幻のマシンには、以下のような最先端装備が予定されていました:
- 8インチ縦型TFT液晶(タッチ対応、グローブOK、まぶしさ&指紋防止)
- 前後ミリ波レーダー(ボッシュ第5世代)
- アクティブクルーズコントロール&自動ブレーキ
- 最新IMU+電子制御サスペンション(モニター操作可能)
ライバルであるBMW R1300GS以上の電子装備と呼ばれるほどで、KTMの「本気」を感じさせました。
なぜ発売されなかったのか?

1390スーパーアドベンチャーは、KTMの2023年在庫過多と財政再建の波により開発・発売が凍結されたとされています。
スーパーデューク1390のみが予定通り登場し、アドベンチャー版は“しばらく見送り”の状態に。
「最新技術を一気に詰め込んだものの、リスクが高すぎた」という見方もあります。
技術詰め込みすぎの反動?
近年のKTMは、頻繁な電子制御の更新により信頼性に不安を抱かれる場面も増加。
セミオートマ・可変バルブ・電子サス・前後レーダーといった車並みの装備が、逆にユーザー離れを招く可能性も。
バイクはシンプルさを求める声も根強く、「複雑化しすぎでは?」という懸念は否めません。
とはいえ…セミオートマは今後の“標準装備”になるかも
セミオートマが急速に増えてきた背景には、EV車やハイブリッド車の技術のフィードバックがあります。
たとえば:
- EV:アクセル開度だけで走る
- ハイブリッド:EV+ガソリンの切り替え制御
この制御技術が、ガソリンバイクの変速制御にも応用され始めています。
つまり、セミオートマは「バイクの未来の入り口」でもあるのです。
ホンダとKTMの違いは「操作感の自由度」
ホンダのEクラッチは「クラッチ操作なし+任意でシフトチェンジ可能」。
KTMは、マニュアル操作に加えて完全オートマモードも備えるなど、よりクルマ寄りの変速方式を志向していました。
BMWも追従する中で、セミオートマは“最適解”を探る段階にあります。
まとめ:幻に終わったけど、確かに存在した未来像
KTM1390スーパーアドベンチャーは、結果として発売されないまま幻となりました。
ですが、そこに詰め込まれた思想と技術は、間違いなくバイクの未来像を提示していたと言えます。
複雑化が進む一方で、ライダーとしては「バイクらしさをどう残すか?」という課題も突きつけられる時代。
セミオートマが本当の意味で“ライダーの味方”になるかは、これからの進化にかかっているのかもしれません。