スズキの菌に侵される前に読め。―『ばくおん!!』に見る、最も不謹慎なバイク入門

ついに真打ち登場ですね。

『スーパーカブ』が「静謐な宗教画」だとしたら、この『ばくおん!!』は「バイク業界のあらゆるタブーを煮凝りにした劇薬」です。

女子高生×バイクという一見キャッチーな皮を被りながら、その実態は、特定のメーカー(特にスズキ)への執拗な愛のムチ、中古車業界の闇、そしてライダーの滑稽な自尊心を徹底的にコメディへと昇華させた「バイク乗りによる、バイク乗りのための、自虐的バイブル」。

この「猛毒の1巻」を徹底的に解剖します。

『ばくおん!!』:女子高生という名の「猛毒」が、バイク界のタブーを笑い飛ばす。

「バイクはバカにしか乗れない乗り物だ」 ……作中で堂々と放たれるこの台詞に、全ライダーが「その通り!」と膝を打った瞬間、この漫画の勝利は確定しました。

坂道にへこたれた少女が、最も「不経済な道」を選ぶまで

主人公・佐倉羽音がバイクに興味を持ったきっかけは、「登校の坂道がしんどいから」。 そんな極めて真っ当で、かつ不純な動機で、彼女は「維持費がかかり、雨に濡れ、夏は暑く冬は凍える」という、世界で最もコスパの悪い移動手段に足を踏み入れます。

この「無知な新兵器」である羽音が、偏った知識と情熱を持つ同級生・天野恩紗(もじゃもじゃの方)に導かれ、免許取得という名の「洗脳プロセス」を経ていく様は、もはや喜劇を超えてホラーにすら見えてきます。

スズキ、そしてカワサキ……。メーカーの「格差」を笑う勇気

この漫画が伝説となった最大の理由は、各メーカーに対する「忖度(そんたく)ゼロの暴言」です。

  • 「スズキのバイクに乗る者は、スズキの菌に侵されている」
  • カワサキ乗りに対する、ある種の畏怖(と呆れ)。

これらの描写は、並の編集部なら「メーカーに怒られる!」と震えるレベルですが、それを「女子高生の無邪気な会話」として成立させてしまった。2026年のAIが書く「中立なレビュー」では絶対に到達できない、ドロドロの愛憎が渦巻くバイク愛がここにはあります。

免許取得の苦行を、エンターテインメントに

第1巻のメインテーマの一つが、教習所での免許取得。 一本橋、スラローム、そして「バイクを引き起こせない」絶望。 すべてのライダーがかつて経験した、あの「教習所の孤独と屈辱」を、ここまで笑えるエピソードに仕立て上げた手腕は実に見事です。

羽音がバイクと「会話(一方的)」をし始めるシーンは、バイク乗りの多くが人知れずやっている「重度の症状」を可視化しており、読者は鏡を見せられているような気分になるでしょう。

結論:この漫画は、あなたの「ライダーの常識」を破壊する。

『ばくおん!!』第1巻。 これは、バイクの素晴らしさを説く啓蒙書ではありません。 むしろ、「バイク乗りがいかに奇妙で、頑固で、しかし愛すべきバカであるか」を白日の下に晒す、最も不謹慎な告発状です。

「バイク女子って可愛いよね」という幻想を抱いて読み始めた初心者は、その毒気にやられて熱を出すかもしれません。だが、その熱こそが、あなたが「バイク乗り」という名の、戻れない道へ踏み出した証拠なのです。